都南中2年定期テスト・社会の採点基準につきまして

先日、都南中学校の定期テストで、「塾で教わった通りに解答したら、不正解にされた」という事象がありました。

【問】下剋上を説明せよ。

塾の解答:下の身分の者が、上の身分の者を実力で倒す風潮。

学校の解答:実力のある者が、上の身分の者を倒すこと。

不安に感じていらっしゃる生徒もいたため、学校に問い合わせを行い、こちらから根拠を3点お示しいたしました。

まず、「下の身分」という文言を付けることが世間一般的である点です。中学社会の日本文教や高校歴史の山川出版など、他の会社の教科書では、「下の身分」という文言あるいは同義の言葉が記載されております。また、インターネットで調べてた中の上位5件を見ても同じ状況であり、手持ちの紙の国語辞典2冊でもそうでした。つまり一般的には「下の身分」という文言を付け加えるのが正解であるといえます。

次に、教育系の論文では「下の身分」という文言を付けることが定義とされています。例えば「下剋上 論文」でGoogle検索をしていただくと、米田豊先生の『文化の下剋上』という論文がヒットすると思います。冒頭での下剋上の定義がこのようになっております。なお、米田豊先生は兵庫教育大学の著名な先生であり、その権威は教育の世界では有名です。中学社会の授業計画についての様々なモデルを発表されている方でもあるので、ある意味で模範解答を示されているとも言えます。

最後に国語的な観点になりますが、「実力のある者」と「上の身分の者」が同格ではない点が挙げられます。場合分けをして、ここでの「実力のある者」が「(倒される上の身分の者より)上の身分の実力のある者」と「(倒される上の身分の者と)同じ身分の実力のある者」と「下の身分の実力のある者」とします。「下の身分の実力のある者」が上の身分の者を倒す、これは下剋上と言えます。「(倒される上の身分の者と)同じ身分の実力のある者」が(同じ身分である)上の身分の者を倒しても、下剋上とは言えません。また、「(倒される上の身分の者より)上の身分の実力のある者」が「上の身分の者」、つまり下の身分の者を倒しても、下剋上とは言えません。これは家臣階級が君主階級を倒して、その地位に付くことが下剋上の本質だからです。これを考慮すると「下の身分の者が上の身分の者を実力で倒す風潮」と表現する方が相応しいと言えると考えます。

この中で、「一般的には我々の解答が正しい」とお認めいただきました。

しかし、採点は覆ることはありませんでした。

その理由として、「学校では授業でそのように教え、授業を聞いているかどうかの確認も兼ねているからだ」という返答でした。

これは危険なことだと考えます。

その授業を欠席・遅刻をして、聞き逃した生徒に対してのフォロー体制はどうなっているのか?

入試では高校の先生が採点するため、いくら模範解答に沿って採点するといっても、普段高校で使用されている教科書と異なる表現であるため、都南中の解答では不正解あるいは部分点になる可能性があるのではないか?

不安は尽きません。

結局、模範解答は変更しないと仰っていらっしゃいました。

しかし、せめて受験のことを考慮して、今週中に全生徒に対して「採点基準と一般的な解答」を周知徹底することをお約束していただきました。

あれから1週間以上が経ちましたが、一切説明がないと生徒から告発がありました。

この反故を受けて、当塾HPにて注意喚起の本記事をアップするにいたります。

今回の件について、奈良市で使用されている「東京書籍」にも問い合わせを行いました。

以下、返答を転載いたします。

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弊社発行の平成28年度版歴史教科書「新編 新しい社会 歴史」p.84においては「実力のある者が、力をのばして上の身分の者に打ち勝つ下剋上の風潮が広がって、」とございます。「力をのばして上の身分の者に打ち勝つ」ということで、「実力のある者」は「下の身分の者」を意図しております。今回ご質問をいただき、改めて執筆者に確認しましたところ、「下剋上」の説明として「下の身分の者が上の身分の者を実力で倒す風潮」とするのは差し支えないとのことでした。こちらの平成28年度版教科書の記述につきましては誤解を招きやすい表現かもしれず、先生や生徒の皆様にはご迷惑をおかけしまして、大変申し訳ございませんでした。

令和3年度より発行している歴史教科書「新しい社会 歴史」p.84においては、下剋上について「家来が主人に打ち勝つ下剋上の状況も広がりました。」と記述しております。今回頂いたご意見を踏まえまして、編集委員会で、今後もよりよい表現を検討させていただきたく存じます。

以上、簡単ではございますが、お問い合わせにつきましてのお答えとさせていただきます。今後とも弊社教科書にご指導、ご鞭撻を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

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上記の通りでございます。

繰り返しになってしまいますが、下剋上の説明は、一般的には「下の身分の者が上の身分の者を実力で倒す風潮」が正しいです。

現在都南中学校にお通いの中学2年生の皆さん、ぜひご確認ください。

なお、本記事は学校を批判するためのものではなく、あくまで正しい知識の普及を目的としておりますので、誤解のないようにしてください。

都南中は私の母校であり、学生時代お世話になった恩師も未だいらっしゃいます。

気が引ける面もありましたが、それでも今回は一教育業界に身を置く者として看過できず、多くの生徒に正しい解答を示すためにも必要であると判断いたしました。

よろしくお願いいたします、以上です。

塾長:山﨑